納得!味噌から醤油へ。江戸の調味料の変遷。意外なわけ。

日本料理といえば代表するものは何でしょうか?
寿司、刺身、蕎麦、天ぷら色々ありますね。
これらに共通して使われるものがあります。
調味料である「醤油」です。
日本の食文化は江戸時代に形成されたようですが、その下支えをする調味料、その歴史を見ていきたいと思います。

江戸の食文化の始まりは

江戸(東京)は徳川家康が豊臣秀吉から領地替えの命を受け静岡駿府から移り住んだ地です。
当時は小さな小城があるのみ、今の皇居辺りまで海が迫る湿地帯、そのまま人が住むはとても不便な地でありました。
家康が城を含む町と交通の整備大規模な工事を命じ、現在の東京になったのはご存知の方も多いでしょう。
町作りのため、駿府から家来はもちろん、町人、職人も移り住まわせ、また参勤交代制により江戸から遠く離れた地出身の人が住むことにより、身分や出身が異なる人々の集まりとなり江戸町文化、食文化が発展していったのです。

江戸初期の調味料は醤油でなく味噌

そのうち東京湾で獲れる魚介類を使った「江戸前」料理が作り出され、調味料に味噌を使いました
その味噌は江戸開幕頃は家康の元領地などより尾張の豆味噌、八丁味噌を調達し、やがて江戸市中でも味噌づくりが行なわれ、江戸の食生活に見合った味噌が作られるようになりました。味噌麹屋が軒を連ねていた「麹町」はその名残りです。
また1700年頃になると江戸の人口は百万人を超え、みその消費も現代とは比較にならないほど消費されたようです。

「煮貫(にぬき)汁」江戸初期から中期までの調味料。

江戸の中期までは水に溶かした味噌に酒、鰹節を混ぜて煮詰めた液体を布でこしたもの、これが「煮貫(にぬき)」と呼ばれるものです。

そのレシピは。

「煮貫」は万能調味料。味噌を3倍ぐらいの水で溶かし、鰹節を入れて煮詰め、布袋に入れてこせば出来上がり。布袋に入れて吊るし、液体が袋から垂れる様から「たれ」と呼ばれ、「たれ」の語源となりました。
「煮貫」に塩、たまり醤油で味を整えたものが、うどんつゆ、蕎麦つゆとして使われたのです。

それでもなぜ味噌がメイン調味料なのか

室町時代頃より大豆の生産量が増え、自家製で味噌を作るなど庶民の食生活にも浸透しました。また調味料であるとともにタンパク源、戦国時代には保存食として武士たちが戦場に携帯、江戸初期の主要調味料が味噌であることは当然の流れです。

「煮貫汁」から麺つゆを作る

醤油を使った麺つゆが普及する江戸中期頃までは、蕎麦もうどんもつゆは味噌から作る「煮貫汁」を使用して食べるのが一般的でした。
江戸時代初期の料理本『料理物語』に蕎麦つゆの記載がありそれを紹介します。それは「たれみそに大根の汁を加え、削り節、大根おろし、あさつきを入れ、さらに、からし、わさびを加えてもよい」とあります。今日の蕎麦つゆと別物ですね。
「煮貫汁に大根の汁を加え、削節、大根おろし、ねぎを加え辛子またはわさびを入れたものが蕎麦つゆである。」
と記しています。
どんな味か試してみたくなりますよね。

この煮貫は麺つゆとしてだけではなく、煮魚や炒め物の味付けとしても使えます

煮貫汁がメイン調味料だった頃、醤油はどうしてたの?

「醤油」の登場は味噌よりかなり遅く、室町時代後期(1521~28年)頃、京都で醤油が創醸されたのが始まり。
醤油が本格的に生産されるようになったのは江戸時代から
堺や大坂など上方で生産された醤油が味、品質が良く、江戸に送られてきた。しかし、この醤油は江戸庶民には手が届かない高級調味料であったため江戸中期まで醤油の普及が進まなかったのです。
そのためメインの調味料が味噌。

江戸中期から近郊で醤油が作られ始める

江戸中期以降、江戸近郊で常陸(茨城県)産の大豆・小麦を、赤穂塩を使用して醤油製造されるようになり、野田と銚子(いずれも千葉県)はその中心地に。
上方からの高価な醤油は江戸庶民には手が出ないが、江戸近郊の野田や銚子で作られる醤油は手頃な価格であったため江戸の日常の調味料として浸透していきました。
また、利根川を利用して江戸へ運ばれたことが、江戸での醤油の広まりを助ける要因に。

調味料「濃口醤油」が江戸っ子に受ける

醤油
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野田、銚子で醸造された「濃口醤油」は、色・うま味・香り・コクが特徴の醤油で、かつお節や砂糖、味醂などの強い調味料にも負けず、これが、そばつゆや鰻のたれ独特の甘辛味を引き出しました
江戸後期には江戸っ子好みの濃口醤油が、関西の下り醤油(薄口醤油)より好まれ、蕎麦や天ぷらといった江戸名物に欠かせない調味料として庶民の食文化を支え、これが江戸食の基本となっているのです。

「濃口醤油」とは

日本のしょうゆ生産の8割以上を占め、一般的に使われている醤油です。「濃口」とは塩分濃度が高いわけでなく、醤油自体の色が濃いこと、塩分濃度は「薄口醤油」より低めです
風味やコク、塩味のほかに、うま味、甘味、酸味、苦味を合わせ持ち、透明感がある明るい赤橙色をしていて煮物や照り焼きなどは、濃口しょうゆが合います
調理、卓上用と幅広く使える万能調味料。

まとめ

江戸の食文化の発達と調味料が味噌から醤油への移行を見てきました。日本の味を下支えしてきた貴重な役割をしてきた調味料。深く知れば知るほど興味が湧いてきます
今日は蕎麦でも食してみましょうか。