麹米を作るには「温度・湿度・酸素」管理が重要

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お酒を造るには酵母が酵素を出して糖分をアルコールに変えるなど微生物の力を必要とします。
日本酒は、酵母の前に『麹菌』に活躍してもらい麹米を作る必要があります。

麹米』造る作業。自分の言葉に直して説明いたします。

麹米を作る麹菌の役割

日本酒醸造工程は
お米のデンプンをブドウ糖に変え
ブドウ糖をアルコールに換える。
このステップを踏んで日本酒が造られます。

この工程のうち『麹菌』はお米のデンプンをブドウ糖に変える役割を担っています
『麹菌』は微生物でありカビの一種。糸状の菌です。
生命活動として栄養分を吸収し、増殖します。
菌糸の先端からデンプンやタンパク質などを分解する様々な酵素を放出し、酵素でお米のデンプンやタンパク質を分解してできたブドウ糖やアミノ酸を栄養分にして増殖します
麹菌が生成する酵素は、でんぷんを糖に分解する「アミラーゼたんぱく質をアミノ酸に分解する「プロテアーゼ」、脂質を分解する「リパーゼなどがあります。
酵素の働きで、素材をやわらかくしたり、旨みや甘味を引き出したりして麹菌の養分にするわけですが、彼らが酵素で作り出したブドウ糖、アミノ酸をお酒造りに活かしていきます

『麹造り(製麹・せいきく)』作業とは

「麹造り」と呼ばれる作業は日本酒作りにおいて重要な作業です。
具体的な作業は蒸したお米に麹菌を繁殖させ麹米を作ること
麹米に繁殖した菌が酵素を出してデンプンをブドウ糖に分解するのです

絶えず温度管理、湿度管理、雑菌防御が大切。作業時間2日強必要とします

麹米造りの工程ー初日の作業ー

麹造りには麹菌を繁殖させるための蒸米が必要です
炊いたお米ではないのです。
蒸したお米。ただ蒸したお米なら良いのかといえばそうではなく、麹菌を繁殖させるのに最適なお米、酵素をたくさん作り出しブドウ糖、アミノ酸をたくさん作り出してくれる麹菌を生育するのにベースとなる最適な蒸米が必要です。

麹米工程1、「洗米」

蒸米作りの第一歩
お米に水分はありますが、洗米にて水を吸収させる
例えば1kgのお米に水分を吸収させ1.2kgにさせる

麹米工程2、「蒸し」

洗米の次の作業
お米を甑(こしき)に入れ100℃の温度で蒸します
お米内部のデンプンを軟らかくしたり脂質の分解の効果を見越して、蒸しはおおよそ50分。

麹米工程3、「引き込み」

蒸し上がった米を冷まし40℃ぐらいまで下がったら麹室に搬入
床に簾(すだれ)と布を敷いて上に蒸米を乗せる
温度が均一になるように蒸米を積み上げ自然冷却
蒸米の塊は崩して広げ、品温と水分量を調整

蒸し具合の確認
蒸しの確認で重要ポイントは硬さや弾力、伸び方、手触り
またベタつきがないこと。ベタついたお米は菌糸が中まで伸びません。「外硬内軟」の蒸米がgood。麹菌が水分を求めて菌糸を中まで伸ばします。

麹米工程4、「種切り」

麹菌を蒸米に散布する作業です
床に積み上げた蒸米が2〜3時間経過し
品温(32℃ぐらい)と水分量が目標値になったら「種切り」を行います。
麹菌を大量に繁殖させた麹米の入った容器を
蒸米の上からカラカラと振り
満遍なく胞子が蒸米全体に付着するように麹菌をふりかけます
混ざったら山積み、全体を布で包み乾燥を防ぎます。
湿度の高い環境をつくることで、胞子の発芽・増殖を促進します。

麹米工程5、床もみ(とこもみ)

胞子が蒸米に均一に付着するように良く混ぜ合わせる作業
床もみが終わったら麹菌のついた蒸米を集めて積み上げ布を被せてます。
麹菌の繁殖力と蒸米の保温、適度な保湿のためです。
この時点で蒸米は「麹米」という呼び名に変わります。

-雑菌の汚染に注意-
実は麹室に蒸米を入れてから雑菌との戦いが始まります。
麹菌が蒸米に繁殖する前に他の雑菌が繁殖すると
製麴作業になりません。清潔を保つことが重要
麹米が腐敗しないように

麹米工程6、「切り返し」

床もみから10〜12時間経過すると、麹米同士がくっつき
一日放置したご飯のように塊になります。
麹米の塊を手でほぐし、麹米の温度・水分を均一にし、酸素が麹米全体的に行き渡ることで麹菌の繁殖が促進されます
床もみの日の夕方行います。
これが「切り返し」作業。
作業が終わったら麹米を集め直して、布を被せて麹菌の繁殖を待ちます。

麹米造りの工程ー2日目の作業

麹米工程7、「盛り」

麹米を麹蓋、麹箱、麹床など専用木箱に入れ温度・湿度を調整する作業が「盛り」
切り返し作業から11〜12時間経過した頃に行います。
9時間を経過したあたりから温度上昇が強くなって
この頃から麹米に変化があり、麹米の表面に白い斑点が現れ
麹菌が繁殖を始めています。
麹菌が繁殖すると麹米の温度が上昇します。
熱をこもらせることで、麹米の温度低下を防ぎます
麹の育成を助けるためには適度な熱が欠かせません。

麹米工程8、「積み替え」

盛りから3時間経過し、麹の温度が上がってきたら小箱の上下を入れ替えて麹米の温度を36℃ぐらいに調節します。

麹米工程9、「仲仕事」

麹菌への酸素供給と麹米温度のムラを無くすのが目的の作業
「積み替え」(箱の入れ替え)作業から3時間、
仲仕事は36℃前後で行います。
麹米の温度が上昇し塊になります。
塊をほぐし6〜7cmの厚さに平たくして水分を発散させる
これで麹米温度のムラをなくし、麹へ酸素を供給するのです。
でも注意点が
塊をほぐすので麹米の温度が低下しますが
下がりすぎてもいけない。
麹菌の繁殖に影響が出るのです。
スピードが要求される気が抜けない作業です。

麹米工程10、「仕舞仕事」

仲仕事から6、7時間経過。麹米の温度は40度ぐらいまで上昇
「仕舞」の名の通りこれが最後の手入れ。
空気に触れる面積を広げ麹米を乾燥させます
麹から栗のような香り、噛めば甘味も。
仕舞仕事も温度調節が重要になり手早く作業します。
仕舞仕事後、数時間すると麹は最高温度の40~43℃となり、
43℃を超える麹の発酵が終わってしまうので
温度が上がりすぎないよう注意します。
温度が上がりすぎたら平らにして表面積が増やし、厚みを均一にして熱を逃がします

麹米工程11、「出麹」

麹室から出来上がった麹を運び出すこと
仕舞仕事から約8時間で掛麹(麹を握って手触りがふんわりと軟らかく、手を開いたら麹が手につかない状態)、12時間くらいで酒母麹(酒母造りにそのまま使える麹のこと)が出来上がり、麹室から運び出すタイミングを測ります。
品温40〜43℃をキープさせながら仕舞仕事から約10時間。
麹室にから麹を出します。

麹米工程12、「枯らし」

出麹後は枯らし作業です。
麹菌の増殖を止めるため一定時間、意図的に放置すること。
麹を素早く冷却・乾燥させ、麹菌の発育を止めて休ませること。この「出麹枯らし」を経てようやく麹が完成。

蔵元の麹米へのこだわり

美味しんぼ』に掲載された蔵元の麹米へのこだわり紹介

出羽桜酒造 雪漫々
出典 楽天

雪漫々
麹や酵母もすべて山形県産のものを使用して造られたオールオリジナルな山形の酒。

『雪漫々』紹介ページへ

神亀酒造
出典 楽天

神亀
神亀酒造は何も足さず、何も隠さず、職人の技と農家と時間を味方として、じっくり丁寧に麹から作り上げています。

『神亀』紹介ページへ

樽平酒造 金住吉

住吉
麹米はむしろに広げ自然放冷。麹蓋、暖気樽など昔ながらの木製の道具を使用。

『住吉』紹介ページへ

喜久酔 大吟醸
出典 楽天

喜久酔
米麹は全て手作り、触れることを重要視しする青島酒造は、「麹作り」を機械に任せず、手作業で行っています。五感での酒造りを重要視。

『喜久酔』紹介ページへ

天狗舞 純米大吟醸
出典 楽天

天狗舞
麹造りは人の五感や経験が大事。酒造りに必要な微生物を常に身近に感じることが、酒造りにとって必要なこと。手をかければ微生物はそれに応えてくれる。

『天狗舞』紹介ページへ

まとめ

麹造り(製麹・せいきく)作業を紹介してきました。
絶えず温度管理、湿度管理、雑菌防御が大切。
また麹菌は微生物。生物である以上酸素も絶対必要。
機械化によらず手作りで麹米を造る蔵もあるほど酒造りに重要な2日強必要とする作業です。